ウルワツを3周した日

波が大きいと流れも強い

ウルワツはビッグスウェルが入ってもクローズアウトせず、トリプルサイズでもサーフィンしてる人がいる。僕はビッグウェーブは好きじゃないので、あまり大きくない日にウルワツへ行く。逆に小さ過ぎても良くないので、頭から頭オーバー位が狙い目だ。

その日はウルワツへ行くと、思ったより波が大きかった。なんとか乗れそうな波もあるので入ってみることにした。
洞窟からパドルアウトすると、みるみる右に流される。いつもより流れが強く、あっという間にコーナーの先まで流された。ブレイクを超えるとピーク側に向かうカレントに変わるので何とかなるが、洞窟の正面へ行くのに何倍もの距離をパドルした。

ピークでは、お化けセットを食らわないように気をつけながら、お得意の小さめ狙いで楽しめていた。そろそろ満潮になるので、洞窟がヤバくなる前に上がることにした。

洞窟を通り過ぎる

いつものようにピークの一番奥からライト方向に乗る。流れが強いので右方向にパドルしながら岸を目指すが、どんどん左に流されていく。川のような流れだ。そして、岸にたどり着く前に洞窟を通り過ぎてしまった。
「ピーッ」と崖の上から笛を吹かれる。こうなるともう無理だ。やり直すしかない。クルっと向きを変え沖を目指す。コーナーの先まで大回りしてようやくピークに戻った。やれやれ、無駄な体力を消耗してしまった。

再びピークからライト方向に乗り、今度こそはと更に右へ向かって必死にパドルする。岸まであと数メートルという所で、またもや洞窟を通り過ぎた。
「ピーッ」
その時僕は見た。真っ二つに折れたサーフボードにしがみつきながら、洞窟の前を通り過ぎていく白人サーファーを。
パドルもできずに流されていく彼はどうなってしまうのだろう? パダンパダンから上がるのかな?

ヘロヘロになりながらピークに戻ってきた。もうピークから上がるのは無理だと判断し、テンプルのエンドセクションまで行き、インサイドスープに乗り岸に向かった。
岸沿いに流されながら洞窟に近づいていく。だが、すでに満潮で洞窟の中が恐ろしいことになっているのは想像がつく。そこで、イチかバチかの賭けに出ることにした。
洞窟の横には人がひとり通れる位の岩の裂け目があり、砂がついて浅くなっている。そこから上がれば足が着くんじゃないかと考えたのだ。

洞窟の横から上がる

流されながら岩の裂け目まで来たところでパドルを開始する。ギリギリまで近寄りサーフボードから降りると足が着いた。ほっ、よかった。
サーフボードを抱えて立ち上がった瞬間、あまりの疲労に足がふらついた。そこへ後ろから打ち寄せる波にドンッと突き飛ばされた。
コツンとサーフボードを岩にぶつけたが、気にしてられない。急いで裂け目の奥へと避難した。

安全な場所で精根尽き果てへたり込む。サーフボードは少しへこんでしまったが、無事に上がれて何よりだ。