誰もいないフラットサイズで
その日は海へ行くと予想以上に波が小さく、膝くらいの波がインサイドでバシャンと割れていた。
バリでここまで小さいことは珍しく、フラットと呼ばれるサイズだ。サーファーは誰も入っておらず、帰ろうか迷ったか一応入ってみることにした。
なんとかテイクオフできるものの、すぐにスープになってしまい全く練習にならない。毎回サーフィンすれば何かしら得るモノがあるのだが、今回ばかりは何も得られそうにない。
完全に諦めモードで、こうなったら普段できないことをやってみようと考えた。

なぜかボードがよく走る
僕は波に乗ると腰を低くして前足荷重にするクセがある。それはローカルのサーフィンとの大きな違いの1つだ。
頭ではわかっていても、波に乗ると無意識にそうなってしまう。そこで腰を落とさないように乗ってみた。
ほぼ棒立ち状態で、HOW TO本で言ったら悪い例である。
ボードを走らせるのも、膝を曲げないと前足荷重にならないので、前足のスネでグイグイと押してみる。まるで基本を知らない初心者のように。
すると、どういう訳かボードがよく走るではないか。パワーのないスープの下を、今までにない感覚で走っていく。いつもより荷重がボードにしっかり伝わっているようだ。
スープライドしかできないフラット波で、初心者丸出しのサーフィンをしながら、新たな感覚が楽しくて夢中になっていた。
そして、コレをきっかけに僕のサーフィンは変わり始めるのであった。