大波に巻かれ死にかけた

空いてるのには理由がある

スランガンは日本人にも人気のサーフポイントだ。波は良いがいつも混んでる。
僕は混んでるポイントは好きではないのであまり行かないが、たまに行くことがある。

その日はスランガンに行ってみると、なぜかガラガラだった。パッと見パーフェクトな波がブレイクしている。サイズは大きいようだが遠くてよくわからない。
とりあえず入ってみようとパドルアウトした。

左側のチャンネルから回り込み沖に出ると、やはり大きかった。ダブルサイズがコンスタントに割れている。サーファーは5人しかいない。全員白人だ。
ピークの波は乗れそうもないので、端っこで小さな波を狙うことにした。

この作戦が功を奏し、ライトの波にちょこちょこ乗れていた。小さめと言っても頭半くらいあるが、形が良いのでテイクオフもイージーだ。しかも貸し切りである。
そこへレフトの波が来た。良い波だったので思わず手を出した。
その波には気持ち良く乗れたが、乗り終わった場所はピークのインサイドだ。運良く波が止んだのでそのまま沖へ向かう。しかし、もう少しでラインナップという所でお化けセットが来てしまった。

お化けセットに巻かれた


はるかアウトで割れた波は、サイズがどれくらいだったか見当もつかない。押し寄せて来るスープがダブルくらいある。
ドルフィンスルーもむなしくグルングルンに巻かれる。洗濯機に放り込まれたボロ雑巾のように。
こういう時は下手に動くと息が続かないので、両手で頭をガードして浮き上がるのをじっと待つ。そのうち浮き上がるだろうと待ち続けるが、一向に浮かび上がらない。
長い。長すぎる。
だんだん息が苦しくなってきた。それでも冷静さだけは保っていた。

いよいよヤバくなり、思わず取った行動が息を吸ったフリをするというものだ。息を止めたまま胸式呼吸のように胸を脹らます。こんな方法でも脳を騙せたようで少し楽になった。が、すぐに苦しくなる。
吸ったフリも3回目には限界に達し、もうダメかなと思った。その時、ようやく浮かび上がった。


思い切り息を吸い込み、空気のありがたみを実感する。周りを見るとかなりインサイドまで持っていかれてた。
そのまま上がればいいものを、酸欠でバカになっていたのか再び沖へとパドルアウトするのであった。

サーフボードに引っ張られていた


なぜ浮き上がらなかったのか考えてみると、スープに乗って走るサーフボードに引っ張られていたようだ。トローリングでいえばサーフボードが船でリーシュコードが釣り糸、僕はルアーだ。大型魚が食いつかなくて良かった。
それ以来、巻かれた時は足首からリーシュコードをたぐり寄せるようにしている。サーフボードにたどり着ければ海面から顔を出せる。

今思い出してみても、あの時はよく息が続いたなと思う。おそらく冷静さを保ち続けたのが良かったのだろう。
それと、もう一つ心当たりがある。スランガンへ行く途中にゴミの埋立地があり、悪臭を放っている。バイクだと悪臭をモロに食らうので、いつも息を止めている。数十秒は止めることになり、これが知らぬ間にトレーニングになっていたのかもしれない。