バリの地鶏を食す

アパートの宴会で

いつもは質素な宴会のつまみも、突然豪華になることもある。アパートの庭には大家が大事に育てている地鶏がいて、こいつを捕って食おうと言うのだ。

大家の家は別の場所にあり、夜アパートに来ることはない。代わりに住み込みの管理人がいるが、この管理人も宴会のメンバーなのだ。

ブロイラーは飛べないと思うが、地鶏は飛ぶ。5メートル位の高さは軽く飛び上がり、夜はマンゴーの木の上で寝ている。
それを懐中電灯で見つけ、マンゴー捕りの長い棒でつつき落とし、落ちたところを捕まえる。
捕まった地鶏は断末魔の雄叫びをあげている。だが、包丁で首を切って放っておけば、全身の血が抜けて静かに息絶える。

噛めば噛むほど旨みが

息絶えた地鶏の毛をむしり取り、慣れた手つきで捌いていく。
ある者は自家製のサンバルを作り、ある者は中華鍋の油を加熱する。僕にできるのは鶏を捌く手元を懐中電灯で照らすくらいだ。

できあがった地鶏のサンバル揚げが皿に盛られ中央に置かれた。さっそく皆でいただく。
バリならではのスパイシーな味つけが美味い。肉は筋肉質で固めだが、噛めば噛むほど旨味がにじみ出てくる。
そう言えば、地鶏なんて高級なものは日本でも食べたことなかったな。思わぬご馳走に宴会は盛り上がり、アラックもすすむのであった。