ニュピの夜には何かが起こる

年に1度の神秘的な日

バリ島には毎年3月から4月頃にニュピの日があって、夜明けから翌日の夜明けまでは外出ができないばかりか、電気や火も使ってはいけない。サーフィンできないのはもちろん、飛行機は飛ばないしテレビやインターネットも止められる。

旅行でバリ島を訪れていた頃は、ニュピの日を外すように旅程を組んだり、ニュピの日が入ってしまうなら他の島に脱出したり、ただ厄介な日にしか思えなかった。

バリ島に住み始めてからは、年に1度くらいそんな日があっても良いかなと思えるようになった。
どこでも人が多くて賑やかなバリ島で、一日中動物の鳴き声しか聞こえないなんて神秘的な気分になれる。夜になると、普段は見れない満点の星空がお目見えする。
そんなニュピの日を過ごし、やる事もないので早めに就寝した。

早く寝過ぎたせいか、真夜中に目が覚めた。何時だろうと時計を見ようとするが体が動かない。金縛りだ。呼吸もうまくできず息苦しい。
早く収まってくれと目を閉じていると、何か重苦しい気配を感じた。空全体を何かドス黒い物が覆っているような気配だ。

悪霊が空を覆いつくす

なぜニュピの日に外出したり電気や火を使うことを禁じられるかと言うと、天から来る悪霊から身を隠す為らしい。
そんなおとぎ話を信じる訳ではないが、まさにそんなイメージだ。

僕には霊感なんてないし、金縛りになったことも人生で3回しかない。これが人生で4回目の金縛りになる。
その時、近所の犬が一斉に吠え出した。こんな真夜中に犬が吠えるなんて普段はないことだ。
やっぱり何かが起きている。

やがて、その何かが去っていったのか、スーッと体が楽になった。金縛りが解けると同時に眠りに落ち、気づいたら朝になっていた。

実は、以前にもニュピの日に似たような経験をしている。その時 のことは夢うつつでうろ覚えだけれど、金縛りになったことだけはハッキリ覚えている。それが人生で3回目の金縛りだったのだ。